ロクカジョウ [映画や商品を紹介]

様々な作品・商品をカジョウ書き(箇条書き)にて紹介します。

【日本映画】「いざなぎ暮れた。〔2020〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】笠木望 
【出演】毎熊克哉/武田梨奈/青山フォール勝ち/岸健之助/和田まんじゅう/奥村隼也/山口提樹/潮圭太/どさけん/江西あきよし/大皷長次/蒼央/小池澄子/
【個人的評価】★★★★☆

 

【あらすじ】神聖な「諸手船神事」が行われる島根県松江市美保関町が舞台。主人公のノボルは、元新宿のNo1ホスト。金髪の恋人ノリコとともに、このまちに訪れる。目的は実の親戚にオレオレ詐欺をして、お金を工面することであった。

 

 

いざなぎ暮れた。

いざなぎ暮れた。

  • 笠木望
  • ドラマ
  • ¥2037

 

 

・笠木望は、2001年の自主映画作品『きみのジャージはどこ』で様々な映画賞で賞を受け、話題となります。その後、2002年『スワンズソング』で劇場映画デビューをし、2019年『いざなぎ暮れた。』で初のオリジナル脚本の長編映画を手掛けています。

・毎熊克哉は、3歳の時に見た映画『E.T.』で映画作りに関心を持ち、映画監督を目指していたが、自ら演じたほうが思い描いた芝居が伝わると、役者に転身、以降多数の映画賞に関わり、「遅咲きの新人」として注目されています。

・武田梨奈は、2008年『ハイキック・ガール!』で映画主演を市、2009年「ハイキックガール」でCDデビューもしています。空手家としても知られ、黒帯二段の実力者でもあります。

・本作は、第53回ヒューストン国際映画祭で審査員特別賞と最優秀外国語映画賞を邦画初ダブル受賞をしています。

・物語は、元No1ホストの主人公が、とあるお金の工面で、島根県の町に訪れる。そこで、実の親戚にオレオレ詐欺をし、お金を都合するストーリーとなっています。

・序盤から、ダッチチャレンジャーを爆走し、主人公2人が登場します。

・風貌からまともな仕事をしている人っぽくないのですが、毎熊克也が演じているとどうも、いい人感がにじみ出てしまうような印象があります。

・いつもながらの毎熊克也節というよりも、今回はしっかりとコミュ力のあるキャラクターなので、いつも以上に楽しめます。

・車に対しての思い入れと雑学が妙に見え隠れし、このあたりはこだわりなのかと思います。

・オレオレ詐欺をしますが、そのあたりは、妙なコメディ感もあり、本作の流れもどちらかといえば、どこかしらにコメディ要素をふくみながらの展開となっています。

・主人公2人を中心とした展開でもあり、非常にわかりやすく、サクッと楽しめる軽快さがあります。

・「カイジみてえになっちまう」

・正直、毎熊克哉を楽しむ作品として作られている要素もあり、ストーリーの大半を暗証番号に悩むという展開ではあります。

・3周くらい回って、それが楽しい作品ではあります。

・もともと、吉本興業バックアップで、地域発信型映画として島根県松江市美保関町を舞台に制作した作品でもあり、シナリオ自体も、それがありきでの制作のようにもみえます。

・とはいえ、83分の中で、サクッと軽快に進む展開でもあり、さほど苦痛な作品ではありません。

・むしろ、一癖ありそうな登場人物だらけですが、ほぼ極悪人はいないというところも、憎めない要素があるように思います。

 

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【日本映画】「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班〔2020〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】橋本一
【出演】坂口健太郎/北村一輝/吉瀬美智子/木村祐一/池田鉄洋/青野楓/杉本哲太/奈緒/田中哲司/鹿賀丈史/伊原剛志/
【個人的評価】★★★☆☆

 

【あらすじ】2021年の東京が舞台。政府高官が高速道路で事故死をするが、事故ではなく、事件の疑いが浮上する。2009年の東京でも似たような交通事故死が発生し、過去と現在を結ぶ無線機から、三枝・大山の時空を超えた2人の刑事の操作が始まる。

 

 

 

 

・橋本一監督は、テレビドラマの制作を努め、2002年『新・仁義なき戦い/謀殺』で映画監督デビューをしています。2011年「探偵はBARにいる」は話題となり、「臨場 劇場版」「相棒シリーズ X DAY」などのドラマ由来の映画を多数手がけている監督です。

・坂口健太郎は、『MEN’S NON-NO』でモデルとして活躍後、役者としても活動をし、TVドラマや映画など多くの作品に出演しています。

・北村一輝は、1997年の映画出演が縁で三池崇史監督によって「北村一輝」と改名し、1997年『皆月』や『日本黒社会 LEY LINES』で評価されます。役づくりには独特な手法があり、役にのめり込んでしまう俳優です。特に1998年『JOKER 厄病神』では、役作りで前歯を数本抜こうとしたこともあるようです。出演作品も異常に多く、Vシネマ系にも数多く出演している俳優です。

・主題歌は、 BTS(防弾少年団)「Film out」となっています。

・もともとは、2016年に韓国で放送されたテレビドラマ「シグナル」のリメイク作品となっており、日本国内では、2018年にフジテレビで日本版としてドラマ化されています。本作は、その映画版です。

・物語は、2021年が舞台となっていますが、コロナ禍の世界線ではないようです。

・詳しい説明はTVドラマ版を観ている前提となるので、できれば、TVドラマ版を観てから本作を見たほうが良いです。

・CGが結構よくできていて、序盤から高速道路の事故はしっかりと事故になっているような気がします。

・全体的にアクションが多めでもあり、推理や捜査という要素がちょっと希薄に感じます。

・どちらかというと、ドラマのスペシャル版という印象が近く、映画であった必要性はちょっと感じにくいです。

・昨今のドラマの映画化の流れのあまり良くない風潮を感じてしまうところもあり、TVドラマの視聴者からの制作費の回収という目算の映画化と捉えてもなんら不思議ではありません。

・決して、作品自体に問題があるわけではないのですが、映画という必要性を感じてしまう作品です。

 

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【日本映画】「お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方〔2021〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】香月秀之
【出演】水野勝/剛力彩芽/橋爪功/高畑淳子/松下由樹/
【個人的評価】★★★☆☆

 

【あらすじ】結婚40年以上となる大原夫婦。夫の真一は定年後自宅にずっとおり、妻の千賀子はその状況に「夫在宅ストレス症」になっていた。娘の亜矢は、キッチンカーを営み、そこで葬儀屋をしている菅野と出会い、終活についての相談を始める。

 

 

 

 

・香月秀之監督は、大阪出身の監督で、1996年「不法滞在」で映画監督デビューをしています。その後、「借王 シャッキング」シリーズを制作し、人気となります。2003年「デコトラの鷲」シリーズを手掛け「其の五」まで制作しています。

・水野勝は、スカウトをされ、BOYS AND MENに加入します。BOYS AND MENで人気を博し、後にリーダーにもなります。2011年「タクミくんシリーズ5 あの、晴れた青空」で映画初出演をし、舞台やテレビドラマ等活躍しています。

・剛力彩芽は、2008年ファッション雑誌『Seventeen』で専属モデルを努め、2007年「チョコミミ」でテレビ初出演をしています。2011年『大切なことはすべて君が教えてくれた』に出演し、この時期にイメージとなるショートカットに指定舞う。2011年にはCM出演本数が増え、注目されます。2013年「友達より大事な人」で歌手デビューをしています。2020年に所属事務所を退所し、現在は、個人事務所で活動をしています。

・物語は、定年を迎えた夫婦が、お互いにストレスを抱える中、改めて考え方と「終活」についてを見直し、次の人生へと進んでいくストーリーです。

・まず最初に、このタイトルからして、コメディであることは十分にわかります。

・そして、どこかしら山田洋次監督のコメディ作品のようなニュアンスもあります。

・当然、作品を観ていくと、まさしく、山田洋次監督風味な世代ごとの配役と、その関わり合いのコメディとなっており、いかにもファミリー向けな2時間テレビドラマのようで、しっかりとした映画感があります。

・橋爪功と高畑淳子の夫婦という時点でも、如実にそういう空気感があり、水野勝と剛力彩芽のその若者世代にもその空気感があります。

・間を保つ松下由樹のポジションもしっかりとそれぞれの関係をつなぎとめるクサビのようにもなっています。

・物語の展開も非常にシンプルであり、理解もしやすいので、サクッと観ることができます。

・挿入歌や主題歌には財津和夫の曲が使われており、これもまた、どストレートな感じがあります。

・「青春の影」は名曲でもあり、こういうコメディ作品にちょっとしたエッセンスを持ち込むだけで、最終的に「泣き笑い感動」というまとめ方ができてくるの、非常にシンプルでストレートなコメディ作品です。

・最後まで観て、不快感も感慨も残らない、サラッとしたコメディ作品となります。

 

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【日本映画】「ミッドナイトスワン〔2020〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】内田英治
【出演】草彅剛/服部樹咲/田中俊介/吉村界人/真田怜臣/上野鈴華/佐藤江梨子/平山祐介/根岸季衣/水川あさみ/田口トモロヲ/真飛聖/
【個人的評価】★★★☆☆

 

【あらすじ】トランスジェンダーとして身体と心の葛藤を抱える凪沙は、母に捨てられた少女と出会い、母性に目覚めていく。「母になりたかった」人間が紡ぐ切なく衝撃のラブストーリー。

 

 

 

 

・内田英治監督は、テレビのディレクターや雑誌ライターを経て、1999年に脚本家デビューをし、その後、2004年『ガチャポン!』で映画監督デビューをしています。2019年「全裸監督」など独特な作風の監督です。

・草彅剛は、元SMAPのメンバーで、現在は「新しい地図」に参加しています。SMAPの頃にグループ活動以外に役者としても活躍しており、独特な雰囲気を持つというよりも、普通の人を演じさせると好評なところがあります。

・服部樹咲は、4歳からバレエを始め、様々なバレエコンクールで優秀な成績をおさめており、2020年「ミッドナイトスワン」で映画初出演をしています。

・物語は、トランスジェンダーの主人公 凪沙と母に捨てられた一果との交流を描くストーリーです。

・草彅剛演じる凪沙のトランスジェンダーっぷりは、客観的にはふつうにわかりやすいところはあります。

・問題は、心と肉体の問題であるのはわかるのですが、その理由と状況がちょっとわかりにくいところはあります。

・そもそも、LGBTの感情は理解しづらいところはあり、当事者の抱える問題であることはよくわかりますが、その感覚がわからないところが難しいところです。

・母に捨てられた一果はあまり感情を出さずにいますが、バレエの前ではのびのびとしているところがあり、そこで

・「うちらみたいなんは、ずっとひとりでいきていかなきゃいけんのじゃ」

・「つよなんらんといかんよ」

・このことがきっかけで、凪沙には母性に目覚め、一果を守っていこうとする気持ちが生まれ始めます。

・対する一果は、心を閉ざし気味ではありますが、バレエをきっかけに自分の居場所を見つけ出そうとしていきます。

・「ね、キスしていい」

・田口トモロウも女装をしていますが、意外とこっちはしっくりしています。むしろ違和感が少ないです。

・「いま流行っていますよねLGBT」

・まあ、ここで観ている側の普通の感覚を代弁してくれます。

・そもそも、流行り廃りというわけではなく、ずっと以前からこういう問題はあったのだと気が付きます。ただ、言葉としてしっかりと定着したということが重要でもあります。

・「朝が来れば、白鳥に戻ってしまう。なんとも悲しい。」

・凪沙と一果の関係を主軸に描かれていきますが、本作の主題として、LGBT的な要素を持つ凪沙の印象が強く、この事が本作のメッセージ性のブレを感じてしまいます。

・「頼んでない」

・一果に感情移入しづらいところがありますが、かと言って、凪沙にも感情移入しづらいところもまた、本作を理解しづらいところになっている印象があります。

・コンクールのシーンのシンクロシーンはちょっとショックを受けます。

・「大丈夫、大丈夫じゃ」

・「あんたを迎えにきたのよ」

・「かあさん、あたし病気じゃないの、だから戻らないの。」

・「このバケモンが、帰れ」

・一般の人からみれば、「理解され難い」という要素はよくわかります。

・「わたし、女になったのはいいけど、そうなったらこんなになっちゃった」

・「ハニージンジャーソテーでしょ」

・説明がないのですが、状況をみればわかるのですが、どうなっているのはわかるようになっています。

・本作の問題点は、観終わったあとの印象が妙に「ない」ところであり、一果としての視点で観てしまうとその道筋で得られなかった人たちの意味合いが都合よく解釈されすぎてしまっている点でもあります。

・オリジナル脚本というところではありますが、最終的な救いという点では、各々のキャラクターの自己満足にすら感じてしまうところがあります。

・決して駄作ではないのですが、観る人を拒んでしまう要素があり、広く理解できるような作品ではないので、気軽な気持ちで観られる作品ではありません。

・ただし、なにかぼんやりしたものを考えるキッカケとなる作品であるとも言えます。

 

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【日本映画】「すばらしき世界〔2021〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】西川美和
【出演】役所広司/仲野太賀/六角精児/北村有起哉/白竜/キムラ緑子/長澤まさみ/安田成美/梶芽衣子/橋爪功/
【個人的評価】★★★★☆

 

【あらすじ】主人公 三上は、殺人を犯し、13年の刑期を経て出所する。13年の時間で変わってしまった社会で生活をするため、保護司・庄司夫妻の助けを借りながら自立しようとする。ある日、生き別れの母を探す三上にテレビ番組の製作者が三上の社会復帰をおもしろおかしく描こうと近づいてくる。

 

 

 

 

・西川美和監督は、学生の頃より映像の世界に興味を持ち、是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」のスタッフとして参加し、その後、2002年「蛇イチゴ」で長編映画監督デビューをしています。2006年「ゆれる」では、国内の数々の映画祭で評価され、2009年『ディア・ドクター』でも評価されています。監督自身が脚本を手掛けており、独特な感性のある作品を作り出す監督です。

・役所広司は、もともとは役所勤務の職員でしたが、仲代達矢の無名塾に入り、前職の役所勤めというところから芸名を命名してもらっています。

・仲野太賀は、俳優 中野英雄の次男として生まれ、2006年『新宿の母物語』でテレビドラマデビューをしています。2007年「フリージア」で映画デビューもしており、2008年「那須少年記」で初主演をしています。多くの作品に出演しており、今後の活躍に期待できる俳優です。

・本作は、直木賞作家・佐木隆三が実在の人物をモデルにつづった小説「身分帳」を原案としています。

・西川美和監督は、本作で初めて小説原作の作品を手掛けています。

・英題の「Under The Open Sky」は、劇中の台詞から引用されています。

・物語は、殺人を犯した主人公が、13年後に出所した社会で生き別れの母を探そうとするも、様々な問題と直面するストーリーです。

・序盤から刑務所での生活と出所までは描かれます。

・13年間、刑務所で生活していたことで、世間のズレがあり、一般社会ではなかなか仕事も見つからず、生活保護の元、仕事を探し始めます。

・愚直というか、元ヤクザの鉄砲玉というか、主人公自体が自らの考えにまっすぐな人ではあるので、都度都度問題が発生します。

・また、囚役中のことを手記として取材してもらうことも始めます。

・服役中では、労務をしなくてはならないのですが、裁縫等の手に職があることで、仕事を探しますが、やはり、反社会勢力が一般社会で生活することでの問題を提起しています。

・「そんな仕事、いまどきある?」

・愚直な感じがよく似合う不器用な人というのは、役所広司の演技によく似合い、とても安心して観られます。

・医者の女性が2回目に登場したときに、貧乏ゆすりをしていますが、このちょっとした演技がポイントではあります。

・「もう最高じゃん、この人だけで番組できちゃうって」

・手記を元にテレビ番組を制作しようとしているTV制作会社の人も登場し、物珍しさや話題性などを着目し、三上の社会復帰とともに、その裏の顔も取材しようとします。

・「あんたみたいのが、何も救わないのよ」

・取材する側と取材される側、それぞれの思惑と正義があり、そのことでジレンマに落ちる仲野大賀演じるライターも立ち位置もジャーナリズムとしての問題提起となっているように思われます。

・メイクとはいえ、13年前の若い感じと13年後の風貌の違いを演じられるのはなかなかすごいところはあります。

・役所広司の素晴らしいところは、凄みがある演技を普通にできることなのかもしれません。

・染み付いてしまっている言動と考えはなかなか払拭できるものではなく、普通の正義感として振る舞っても、過去の経緯から、必ずしもその行為が正義とはならない人もいるような印象も受けます。

・「それってやっぱり生い立ちに関係があるんでしょうか?」

・実際には根は愚直な三上だったのかと思えますが、とはいえ、殺人のために服役していた事実もあり、事件の経緯が正当防衛だとしても、それ以前の行動や発言により、印象が変わってしまうこともあります。

・スーパーの店長は、鑑識の仕事を別にしているのかもしれませんが、とても良いつながりな人と出会ったよなぁと思います。

・様々な社会問題を取り入れつつも、決して違和感がなく、辻褄自体も概ね整合性が取れており、普通の主人公視点の物語ながらも、複雑な構成でまとめ上げられている本作は非常に高度で完成度の高い作品かと思います。

・反社会勢力に関わってた人物を主人公とした作品ですが、根幹に根ざすテーマはそういう問題ではなく、現実に起こり得る社会格差と住みづらさが描かれており、非常に見応えのある作品です。

 

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【日本映画】「くれなずめ〔2021〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】松居大悟
【出演】成田凌/若葉竜也/浜野謙太/藤原季節/目次立樹/高良健吾/
【個人的評価】★★★★☆

 

【あらすじ】高校時代に帰宅部でつるんでいた6人が5年ぶりに再会をする。そこで高校時代の思い出を振り返るが・・・。

 

 

 

 

・松居大悟監督は、過去に「アズミ・ハルコは行方不明」をはじめ数作の映画を監督していますが、個人的には、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」の作風に興味を持ち、以降作品を見続けています。

・成田凌は、『MEN'S NON-NO』のモデルとして活躍以後、TVや映画でも出演するようになり、若手として着実なキャリアを積んでいます。

・主題歌は、ウルフルズ「ゾウはネズミ色」です。

・題名の「くれなずめ」は、日が暮れそうで、なかなか暮れない状態「くれなずむ」の変化した言葉で造語となります。

・松居大悟監督の体験をもとにしたオリジナル作品で、舞台化もされているそうです。

・物語は、高校時代の友人たちが結婚式に呼ばれ5年ぶりに再会する。再会したことで、当時と現在で変わってしまったこと、変わらないことを再確認していくストーリーです。

・序盤から、披露宴の余興の打ち合わせシーンから始まり、その後、その余興後が唐突に描かれます。

・どんな余興かは描かれないところに本作のポイントがあり、実は1回観ただけではちょっと理解しづらい時間軸の動きがあります。

・わかりにくいような展開のように見えて、実はセリフから言動まで、しっかりと仕組まれた演出になっています。

・「それが答えだっていいながら、何が答えかいわないっていう、それがいいのよ。」

・主人公 吉尾を中心に描かれますが、この主人公にはちょっとした仕掛けがあり、中盤でその存在の意味が描かれます。

・6人は6様のキャラクター性がありさらにその周辺の人物も個性的なキャラクターが出てきます。

・高校時代はどちらかといえば、陰キャな集まりだったところもあり、その高校時代の思い出もスクールカースト的には中層よりもしたっぽい印象があります。

・そのこともあって、5年ぶりの再会でも、なんとなくモラトリアムをしているような雰囲気で描かれます。

・分かる人には分かる感覚であり、この設定自体が監督の体験に基づくようなところかと思われます。

・思えば、監督の過去作品も同様な雰囲気があり、過去作品がツボだった人には確実に理解できるような内容です。

・「死んでたら偉いの?」

・高校時代に好きだった子は、前田敦子が演じており、登場シーンは少ないですが、なかなかよい印象を残す個性的なキャラクターとして良い感じです。

・「全部、恥骨じゃねえの」

・要所要所で、学生的な感じのネタがあり、こういう要素がモラトリアム感を感じるところではあります。

・「引きずることから逃げんじゃねえよ」

・中盤以降、5年間の空白期間の中でも何かが変わったような空気感があり、過去と現在の狭間のような不思議な演出へと変わっていきます。

・どちらかといえば演劇的な演出でもあり、松居大吾監督の得意とするような世界観で描かれていきます。

・終盤は、ここまでの展開で感情移入できていれば、かなり刺さってくる内容となってきます。

・演出が演劇気味なところもあるので、理解しずらい可能性もありますが、個人的にはとても素晴らしくメッセージをぶっ込んできておりかなり気に入っています。

・伏線の回収具合が絶妙でもあり、主人公とその仲間たちの気持ちの落とし所がモラトリアムから一歩踏み出た感じがします。

・「過去でも書き換えてやろうぜ」

・結局、5人全員がなにか変わったかどうかは、終盤まで観てもらうほうが良いです。

・演劇的な作風ではあるので、映画の構成自体は、ヒトクセあり、その一癖が、本作の特殊なところとなります。

・ウルフルズの曲が作中に使われており、そのアンサーソングは、エンディングになってます。

・作中での曲の使い方が、絶妙ではあり、この使い方があるからこそ、本作の魅力と完成度が高いように思います。

・一度観たあとに、答え合わせとして再度観るというよりも、「もう一度観たくなってしまう」という巧みな構成の映画です。

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『くれなずめ』サウンドトラック

 

それが答えだ!

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【日本映画】「グッバイ・セブンティーン〔2020〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】越坂康史
【出演】初咲里奈/片岸佑太/三坂知絵子/愛葉るび/
【個人的評価】★★★☆☆

【あらすじ】主人公 エイコは、家庭内で疎外感を感じている高校生。ある日、ライブハウスで出会ったショウと気持ちを通わせるが、徐々にショウの束縛が強くなっていく。

 

 

 

 

・越坂康史監督は、自主制作作品『深夜の三人』で話題となり、様々な賞を受賞、その後企業のVPなどの監督をしています。その後、映画監督やプロデューサーとして活躍し、様々な作品を手掛けています。

・初咲里奈は、2009年に「桃井りん」の名前でAVデビューをし、2011年に初芽里奈と改名し、ストリッパーとしてデビューしています。2017年には「初咲里奈」と改名し、2021年にアイドルユニット「殲滅のディストピア」に加入しています。

・本作は、実話に基づいた物語です。

・物語は、家庭内で疎外感を感じていた主人公が、ライブハウスで出会った青年と恋に落ちるも、デートDV問題に発展するようなトラブルへと変わっていってしまうストーリーです。

・序盤から、結末と結びつくような映像が使われていますが、しっかりとした伏線となっています。

・デートDV(交際相手暴力)をテーマとした作品となっており、その問題提起がメッセージとしてあります。

・ときに優しく、ときに変貌する点もあり、なかなか判断の難しいところはありますが、人格破綻一歩手前という点で考えても良いかもしれません。

・「グッバイ・セブンティーン」という題名は、17歳から18歳までの期間の主人公を描いた作品となっており、若い子の恋愛問題を元に作られています。

・ショウの豹変するところは、ちょっと理不尽ではありますが、エイコの盲目的な要素も、ちょっと問題とも思えます。

・裏拳で殴られて鼻血はコントです。

・「俺を殴れ」

・終盤は多少コント感があるのは否めないのですが、40分でまとめている作品でもあり、さほど苦痛な作品ではありません。

・デートDVの抑制の啓蒙作品としては、「こういう人もいるかもしれない」という視点で観ると良いのかと思います。