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【日本映画】「ドライブ・マイ・カー〔2021〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】濱口竜介
【出演】西島秀俊/三浦透子/霧島れいか/岡田将生/
【個人的評価】★★★★☆

 

【あらすじ】主人公 家福悠介は、俳優として成功し、その後、女優の音と結婚し、脚本家に転身し、成功している。かつて2人に子供がいたが、幼くして亡くしてしまっている。ある日、音がくも膜下出血で亡くなり、その2年後、仕事で広島へ向かい、一人のドライバーみさきと出会う。

 

 

 

 

・濱口竜介監督は、「ハッピーアワー」で無名の4人の女性の日常と友情を描いた作品で、世界の映画賞で注目されています。「ハッピーアワー」は、第68回ロカルノ国際映画祭や第37回ナント三大陸映画祭に招待されており、第89回キネマ旬報ベスト・テンではインディーズ映画ながら、3位に選ばれています。その後、「寝ても覚めても」で商業映画監督デビューをしています。「偶然と想像」「ドライブ・マイ・カー 」など、脚本も手掛けている監督です。

・西島秀俊は、19歳の時にオーディションに合格し、芸能界入りをしています。1992年『はぐれ刑事純情派5』で俳優デビューをし、1994年『居酒屋ゆうれい』で映画初出演をしています。『あすなろ白書』等で人気はありましたが、事務所を移籍したために、1997年から2002年の5年間は民放のドラマには出演していません。その後、1999年『ニンゲン合格』で映画初主演をしており、第9回日本映画プロフェッショナル大賞・主演男優賞を受賞しています。その後、シリアスなものから、コミカルなものまで幅広作品で活躍しています。

・三浦透子は、2002年に2代目なっちゃんとしてサントリー「なっちゃん」のCMに出演し、その後、ドラマ『天才柳沢教授の生活』でテレビドラマデビューをしています。2012年「悪の教典 」で映画デビューをし、その後、様々な作品で活躍しています。

・原作は、村上春樹『ドライブ・マイ・カー』 となっており、その他にも、「シェエラザード」「木野」の村上春樹作品の引用がされています。

・登場する自動車は、スウェーデンの自動車会社サーブ製の「サーブ・900」となっています。古そうな見た目でもありますが、バブル景気の頃にブームがあり、輸入第一号で購入した人は、テリー伊藤になります。

・原作では、黄色のサーブ900コンバーティブルが登場しています。

・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞しています。

・2022年・第94回アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネートされています。

・物語は、俳優から作家に転身した主人公が、子供と妻をなくし、そのことで、明かされていなかった妻の秘密と向き合い、広島で出会ったドライバーもまた過去と向き合っていくストーリーです。

・序盤から、悠介と音の生活が描かれますが、断片的な点が多くすべてが理解できないような感じになっています。

・説明が少ないのですが、見た目の感じからだいたいのことは予測できますが、ミスリードになるようなことも含まれます。

・楽屋に高槻が挨拶しに来たときに、音が腕を触るシーンがありますが、これも多分布石なのかと思います。

・40分過ぎてからタイトルとスタッフクレジットがあります。179分もある作品ではあるので、なかなかな時間配分ですが、それでよいのかもしれません。

・なんとなく、中盤を過ぎてから物語が進み始めるような気がします。

・ですが、実際には淡々と物語が描かれており、無意味のように見えるシーンが後々、そのシーンに意味があるような演出となっています。

・特に音と悠介がいる時までの内容は、無意味なように見えてかなり重要です。

・大きな事件性や劇的な展開として描かれないのは、濱口竜介監督ならではの演出でもあり、独特な描き方かと思います。

・登場人物が限られていながらも、主人公 悠介視点で描かれていくので、理解しやすいところはありますが、それは表層的な面で理解しやすいということで、本作の本質という点で考えると、なかなか巧妙な演出が多いです。

・「交代はしません。運転は、私の仕事だからです。」

・みさきというキャラクターも寡黙ながらも、実際には多くのことを語っており、みさき自身のトラウマの解消という点は本作の後半のテーマともなっています。

・村上春樹の作風と雰囲気が充分に醸し出されていながら、濱口監督テイストとなっている点も興味深く、まとめかたが巧みな点があり、商業映画の作品数はまだ少ないですが、鋭い観察力で製作されていることは間違いないです。

・「どこか落ち着いて考えられる場所、知らないか?」

・ここで車のボディを軽くコンコンとみさきが叩くところが良いです。

・よくよく思うと、179分という時間ながら、脚本自体はさほど多くないようにも思えますが、実際にはやはり普通の映画上映時間に伴った脚本ボリュームになっているかと思います。

・重要なことばかり会話していますが、重要な会話に聞こえず、再度振り返ってみることで、その内容が克明にわかるような気がします。

・「さち」というキャラクターと、悠介の描く物語とのつながるようなつながらないような点が絶妙です。

・コレも映像との兼ね合いと思われますが、会話に関することが安易に映像化されず、しゃべっている人の映像のみで間を持たせていることから、そう思うのかもしれません。

・安易に映像化せずに想像の余地を持たせているところに本作の深みを感じることができます。

・説明をすべてしてもらわないと理解されないという昨今の作品の作り方とはちょっと異なります。

・終盤無音となるシーンがあり、深くはその演出意図がわからないのですが、見続けていくとその意味がわかります。

・なぜ、車のドアを閉めるシーンがあり、手に持っているものが「何なのか?」ということです。

・「音さんになんの謎もないんじゃないですか?」

・「なんの嘘も矛盾もないように、わたしには思えるのです。」

・西島秀俊のしゃべりが、演技なのか、演技の練習をしているのかちょっとわかりません。

・他のキャラクターも、どこか不自然な感じもあり、これがすべて意図的であるように思えます。

・複数の物語が絡み合いながらも、しっかりと1本の作品として成立しており、不完全燃焼に感じる要素も少なくなっています。

・最後のサーブの持ち主についても多くが語られていないのですが、前後関係から考えると、状況は理解できるようになっています。

・「ドライブ・マイ・カー」という題名はこのサーブ・900ということも理解でき、車の中での会話や言動が本作の骨格ともなっています。

・「サーブ・900」一つの主人公でもあり、この存在感も車体の雰囲気も、本作の空気感としてすべてのシーンに横たわっているようにも思えます。

・なお、この座席に座っている人の位置の関係性がシーンごとに、変わります。そして、カセットテープというところもポイントで、運転席と助手席の関係性も注意して観ると良いです。

・だからこその「車の中でのセリフ」を聴くことのようにも思えます。

・サラッと観ても理解はできますが、細かいところも動機や理由付けもしっかり裏打ちされており、179分という時間ながら、無駄な要素は限りなく少なく、とても綿密に作られた作品ではあります。

・約3時間という長さではありますが、時間に関しては「本当に気にしなくてよい」です。観始めれば、独特のテンポでしっかりと観続けられる雰囲気と力強さを持った作品です。

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