【監督】安里麻里
【出演】高良健吾/西川可奈子/安部賢一/三河悠冴/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 三井は、家や学校で存在すら思えてもらえてなかった青年。彼は、学生時代にたった一人声をかけてくれた女性に好意を持ち、11年の年月を経て再会する。
・安里麻里監督は、2004年『独立少女紅蓮隊』で長編監督デビューし、その後、コンスタントに作品を作り続けています。
・主演の高良健吾は、モデルとしてスカウトされ、2005年にドラマ『ごくせん第2シリーズ』で3年D組の不良生徒役を演じて俳優デビューしています。その後、映画を中心に活躍している個性派俳優です。
・西川可奈子は、舞台を中心に活躍しており、2016年「ホワイトリリー」で映画出演しております。
・原作は、大石圭の小説となっており、1993年デビュー作『履き忘れたもう片方の靴』で第30回文芸賞佳作受賞しています。
・タブーなどにとらわれない先鋭的な作品を送り出す「ハイテンション・ムービー・プロジェクト」の第2弾作品でもあります。
・物語は独白形式で、主人公 三井の視点で描かれています。
・ストーカーとも純愛とも取れる執着具合がありますが、普通に考えて主人公 三井は偏執的なストーカーです。
・そこまで執拗な感じながら、高良健吾が演じることで多少中和されているところもあります。
・観察する女性は既婚者であり、DVを受けていますが、このDVの描き方が容赦ないところもあり、多少重苦しいところがあります。
・同様なストーカーっぽい作品では、「君が君で君だ」がありますが、こちらも変質的にもかかわらず、描き方によってここまで作品の雰囲気が異なるのも、興味深いところです。
・なお、「君が君で君だ」は、昨年観た作品でも高評価な作品でしたが、本作はホラー要素もあるようなところがあり、両手放しで絶賛できないようなところもあります。
・序盤はまだ犯罪的な行為にまでは行きつきませんが、中盤以降暴走し始めるところに恐怖感も感じます。
・ただし、DVという要素があり、この状況を見てしまうと、放っておけないという感情が働くのもわからなくはないです。
・わからなくはないのですが、何時間もベッドの下にいる状況はさすがに「バレるやろ」というツッコミどころも感じてしまいます。
・「結局こうしたかったんだ」という願望が実現しているようにも見えますが、どこまでが妄想で、どこまでが現実か多少分からなくなるようなところもありその点がこの作品の主人公の屈折したところではあるようにも思えます。
・純愛という視点で言えば、巨悪は旦那になるのですが、やはり真面目に考えると、もうちょっとやり方があったんじゃないかなぁとも思えます。
・最後のオチとしては、まあ良い着地点だったと思いますが、結論としては、高良健吾だから許されるようなところも思います。
・エンディングの曲の入り方が「機動戦士ガンダムのシリアスなシーン」にかかるような感じで、なんとなく、深刻さを感じました。
・エロティックホラーな印象の作品ではありますが、屈折した愛情を描いた普通の物語とも言えます。
・この辺りの作品の明確さが弱いので、モヤモヤしますが、駄作という訳ではなく、しっかりとした内容でできた良作とも思えます。