ロクカジョウ [映画や商品を紹介]

様々な作品・商品をカジョウ書き(箇条書き)にて紹介します。

【日本映画】「大怪獣のあとしまつ〔2022〕」を観ての感想・レビュー



【監督】三木聡
【出演】山田涼介/土屋太鳳/濱田岳/眞島秀和/ふせえり/六角精児/矢柴俊博/有薗芳記/SUMIRE/笠兼三/MEGUMI/岩松了/田中要次/銀粉蝶/嶋田久作/笹野高史/菊地凛子/二階堂ふみ/染谷将太/松重豊/オダギリジョー/西田敏行/
【個人的評価】★★☆☆☆

 

【あらすじ】人類を恐怖にみちびいた巨大怪獣が突如死んでしまう。しかし、残された死体の腐敗が進み、死体処理をしなければ、さらに一大事となってしまう。その処理には3年前に姿を消した特務隊員 帯刀アラタが選ばれた。

 

 

 

 
・三木聡監督は、20代より放送作家として活躍し、『タモリ倶楽部』『ダウンタウンのごっつええ感じ』『トリビアの泉』などに関わっています。2000年「まぬけの殻」で映画監督デビューをし、2005年「イン・ザ・プール」で長編を制作しています。「亀は意外と速く泳ぐ」などの名作を手掛ける反面、テレビドラマでも、「時効警察」「熱海の捜査官」「変身インタビュアーの憂鬱」などを手掛け、ユルい作風ながらも、鋭い視点の作品が多いです。

・山田涼介は、2004年にジャニーズ事務所に入所し、2006年『探偵学園Q』でドラマ出演しています。その後2007年にHey! Say! JUMPのメンバーとしてデビューしています。2015年『暗殺教室』で映画に初主演をし、第39回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しています。

・土屋太鳳は、2005年「スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックス」にて審査員特別賞を受賞し、その後2008年「トウキョウソナタ」で映画デビューをしています。2011年には「鈴木先生」でドラマ初レギュラーともなり、2013年『果てぬ村のミナ』で映画初主演にもなっています。女優業だけでなく、司会もこなすこともあり、多彩な才能のある女優です。

・松竹と東映による初の共同製作作品となっています。

・物語は、巨大怪獣が街を破壊し、凶悪だったが、ある日突然死んでしまう。その怪獣の死体を前にして、死体の片付けをどうするのかという問題をテーマにしたストーリーです。

・序盤より、大怪獣が謎の死を遂げたあとに、その死体が残ったという事実が説明されます。

・大怪獣の死体をどのように処分するのか?ということを描いた作品であり、できることとできないことを論じ合いながら、日本の各省庁などらが、様々な策を講じつつ、対処していく展開です。

・ふええりと岩松了のコント的な演技が受け入れられるかどうかで、本作の感想が変わると思います。

・また、シモネタも入るところもあり、この空気感を受け入れながら鑑賞するする必要もあります。

・小ネタが多く仕込まれていますが、この手法は、時効警察の頃とさほど変わっていないので、このノリにハマれるかが本作のポイントですが、映画という環境上、コメディとシリアスの合間を描く感覚としては、ちょっとスベっているとしか言いようがないです。

・テレビドラマなどであれば、観る側も気楽に観られるのですが、映画となると、やはりある程度の期待を抱いてしまうところはあり、制作側と観る側の温度差がかなりあるように思います。

・「時効警察」の三木聡監督の作品でもありますが、あまりギャグに振り切ってしまうと、面白さはあるものの「映画の必要があるの?」という問題も出てきますので、ちょうど良いスケール感で描いてくれていればよいのかと思います。

・ざっくりと、ユルい作品かと思われ、そのためにあまり気合を入れると、肩透かしとなってしまうので、あまり期待せずに観たほうが良いかもしれません。

・傑作「亀は意外と速く泳ぐ」も、身構えることなく観たことで、スッと物語の世界観に入り込めたので、そのくらいのユルい気持ちで観るのが良いと思います。

・とはいえ、豪華なキャストと壮大な世界観的に、スベっているとしか言いようがなく、もうちょっと狭い世界観であっても良かったのにとは思います。

・結論として、「本作を観たあとの感想のあとしまつ」が必要に思います。

 

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【日本映画】「牛首村〔2022〕」を観ての感想・レビュー



【監督】清水崇
【出演】Kōki,/萩原利久/高橋文哉/芋生悠/大谷凜香/莉子/松尾諭/堀内敬子/田中直樹/麿赤兒/
【個人的評価】★★★☆☆

【あらすじ】主人公 奏音はある心霊動画に自分に似た女子高生が登場しているを発見する。動画では、女子高生が牛首マスクを被せられ、廃墟に閉じ込められるところで止まっていたが、その点に胸騒ぎと不安を感じ、撮影された富山県へと向かう。
 

 

牛首村

牛首村

  • Takashi Shimizu
  • 日本映画
  • ¥2037

 


・清水崇監督は、小栗康平監督「眠る男」やそのほかの映画スタッフとして活動後、2001年「富江 re-birth」で映画監督デビューをしています。ホラー映画を始め、様々なジャンルの作品を手掛けています。

・Kōki,は、両親に木村拓哉と工藤静香を持ち、2018年「ELLE japon」でモデルデビューをしています。2015年にはブルガリのアンバサダーに就任し、15歳での就任は史上最年少となります。その後もCM等で活躍をし、2019年にはパリコレでシャネルの2019-20年コレクションでランウェイデビューをしています。2021年「牛首村」で映画デビューと俳優デビューをしています。なお、本名が、木村光希(みつき)となるので、Kōki,という芸名になっています。

・「犬鳴村」「樹海村」と続く、「恐怖の村シリーズ」3作目となりますが、本作では実在の心霊スポットをもとに制作されています。

・モデルで活躍しているKōki,が女優デビューとして本作を選んだ審美眼はちょっと謎なのですが、多少演技的にアレでも他の要素でなんとかなるという視点とも思えてしまいます。

・物語は、とある心霊動画に自分と似た人物が撮影されており、そのことで不安に感じた主人公が、牛首村と呼ばれる場所へ赴くストーリーです。

・序盤からとある動画配信者の動画撮影のシーンが描かれます。

・エレベーターに閉じ込められるわけですが、メンテナンスされていないエレベータと心霊スポットという要素があるので、別の意味で恐怖感を感じます。

・エレベーターに挟まれるのはたまに個人的に想像することがあるので、ちょっとみたくないシーンです。

・とりあえず、Kōki,の髪の毛がとても長いところがあり、むしろ、こっちのほうが気になります。

・怖いシーンは、和製ホラー映画の手法でもあり、ちょっとしたサブリミナルや、「志村、後ろ後ろ」的なホラー演出ではあります。

・そう思うと、1998年「リング」からさほど変化はないのですが、まあ、こんなところです。

・おばあちゃんとの対面で歌を歌うところはさすがに怖さを感じます。

・Kōki,自体の演技は、まだ伸びしろがあるのかなぁと思いますが、どうしても、木村拓哉風な感じがしますが、さらに思えば、工藤静香の娘でもあり、この印象がどうしても残ります。

・終盤のお堂から出てくるのはコントかと思います。

・「犬鳴村」「樹海村」「牛首村」と村シリーズとしてすでに3作が制作されましたが、本作を毎回観ている理由はよくわかりません。

・あえて言えば、サクッと観られるところに気楽感があるのかもしれません。

 

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牛首村

 

 

 

 

樹海村

樹海村

  • 山田杏奈
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【日本映画】「ヤクザと家族 The Family〔2021〕」を観ての感想・レビュー



【監督】藤井道人
【出演】綾野剛/舘ひろし/尾野真千子/北村有起哉/市原隼人/磯村勇斗/菅田俊/康すおん/二ノ宮隆太郎/駿河太郎/岩松了/豊原功補/寺島しのぶ/
【個人的評価】★★★★☆

 

【あらすじ】舞台は、1999年。主人公 山本賢治は父親を覚せい剤で失う。ある日、柴咲組組長・柴崎博の危機を救ったことで、父子の契りを結びヤクザの世界に入る。

 

 

 

 

・藤井道人監督は、映画演出を学び、複数の短編映画を監督した後、伊坂幸太郎原作「オー!ファーザー」で長編デビューしています。2019年「新聞記者」で、日本アカデミー賞で作品賞を含む6部門を受賞し、高い評価のある監督です。

・綾野剛は、「仮面ライダー555」で役者デビューをし、中野裕之監督の「全速力海岸」で主演にもなります。その後、2007年「Life」で長編映画初主演をし、音楽監督も兼任しています。2014年『そこのみにて光輝く』では、様々な賞を受賞し、『コウノドリ』『リップヴァンウィンクルの花嫁』『64 -ロクヨン-』『怒り』『日本で一番悪い奴ら』など、話題となる作品に出演し、演技の幅を広げています。

・主題歌は、「FAMILIA」 millennium paradeとなっており、常田大希が中心となったグループです。

・常田大希は、「King Gnu」や「PERIMETRON」にも関わりがあり、多彩な才能で音楽シーンに関わっています。

・物語は、主人公がヤクザの世界に入り、そこで、自分の家族とヤクザのファミリーの形を描いたストーリーです。

・序盤20分で主人公 がどのようにこの道に進んだ理由をわかりやすく描いています。

・舘ひろしが柴咲組組長を演じており、この配役はかなり良いです。

・そこから賢治は、海外に人身売買で送られそうになりますが、柴咲組の関係から見逃されるまでに至ります。ここまでの追い詰められる感はなかなかハードな展開です。

・「これで、家族だな」

・ここでタイトルとなるわけですが、ここまでのツカミがしっかりとできています。

・山本の舎弟を、市原隼人が演じていますが、非常に良い感じです。むしろ違和感ないです。そのうえで、綾野剛自体も、ハマリ役のようなところでもあり、役者の揃え方はとてもよいです。

・1999年、2005年、2019年の3つの時代を描いており、この20年の時間の流れでも、違和感を感じさせない風貌という点でも、役者の揃え方の良いところでもあります。

・「ここに来るってことは、そういうことだろ。」

・ホステスの工藤は、尾野真千子が演じていますが、この立ち位置と布石もまたよくできています。年代を重ねても違和感の感じないところは良いです。

・「だったら、俺のタマでも取ってみるか?」

・柴咲組と侠葉会の争いとなりそのことで、14年の服役を賢治は負うことになり、14年の経過が唐突に過ぎます。そして、そのあいだの変化で、かなり寂しい感じとなってしまいます。

・ここから、本作の主題となってくるところが顕著になってきますが、色々と変わってしまった社会に、2019年時点での実社会の問題を描き出されていきます。

・昔のしのぎとは違い、シラスウナギの密猟をしているというところも、とてもわびしく、さらに、組を抜けた細野(市原隼人)も、反社会勢力と関わることをためらうところが出てきます。

・この距離感というのも、昔は家族だった舎弟がいつの間にか距離を置いてしまう侘しさがあります。

・さらに、焼肉屋の息子だった翼も成長し、店の問題の仲裁役として、ヤクザとは違う形でシノギをしていたことがわかり、翼の父親も元々ヤクザだったことが描かれます。

・義理や人情では立ち行かない社会情勢となっており、綺麗事で済まない現実も突きつけられます。

・ヤクザから足を洗おうとし、社会に復帰していくさなか、賢治と工藤との家族としての束の間の生活も描かれます。

・この14年という歳月は色々なことが変わってしまい、生まれてものや、消えたものが無残にも描かれていきます。

・「お前は、まだやり直せる。」

・その中で取り残された賢治がどういう道を選ぶかという点も、また、どのみち厳しい状況なのかもしれません。

・「もう、お前らの時代じゃねえってことなんすよ。」

・翼もまた、家族の関係をどこかに心に残しており、そのことで、どうしてもやりきれないことが芽生えているのかと思います。

・社会生活に馴染もうとする賢治も、とあることがきっかけで、その周辺も含め、すべて散り散りとなっていってしまいます。

・「全部終わりだよ、終わりだよ」

・社会的な問題として、どうしても消せない問題と向き合っていかなくてはならず、これは2021年「素晴らしき世界」でも似たようなところで描かれたことではあります。

・「あんたさえ、あんたさえ・・・」

・「短い間だったけど、本当の家族みたいに一緒に暮らせて、幸せな時間だった」

・賢治の独白と工藤への言葉で綴られますが、本作のあるべきところは、題名どおり、「ヤクザと家族 The Family」というところだったのかもしれません。

・「あんたさえ、戻ってこなければ、ちくしょう」

・とある人物がとあることをするのですが、これは、冒頭のシーンに繋がる経緯となります。

・本作は、キーワードとして煙があり、「煙に巻いてきた人生」「狼煙をあげる人生」「煙たがられる人生」としてビジュアル的なテーマを取り入れられています。藤井道人監督作品で、『デイアンドナイト』では風、『新聞記者』では落ち葉、『宇宙でいちばんあかるい屋根』では星を、メタファーとしているそうです。

・20年に渡る物語ではありますが、家族の繋がりがどのようなことで、本当の意味での家族と、つながりを意味するファミリーとを描いた作品であり、ヤクザ映画としての範疇だけにとどまらず、社会問題やそのための変化をきっちりと描いた作品とも思えます。

 

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【日本映画】「その日、カレーライスができるまで〔2021〕」を観ての感想・レビュー



【監督】清水康彦
【出演】リリー・フランキー/中村羽叶/吉田照美/岡田ロビン翔子/黄栄珠/福田信昭/神野三鈴/
【個人的評価】★★★☆☆

 

【あらすじ】主人公 健一は、息子 映吉を心臓病で亡くし、妻も去ってしまったことで、孤独に暮らす男性。そんな中、年に一度のごちそうとしてカレーを作り始める。

 

 

その日、カレーライスができるまで

その日、カレーライスができるまで

  • 清水康彦
  • 日本映画
  • ¥2037

 

 

・清水康彦監督は、広告やミュージックビデオなどのプランナーやディレクターとして活躍し、2019年『MANRIKI』で長編映画デビューをし、様々な映画賞を受賞しています。

・リリー・フランキーは、イラストやデザインなどの作家活動のみならず、文筆、俳優など様々なジャンルで活動し、2006年「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」では、映画化もされ、作家としての才能も発揮しながらも、俳優としても、数々の賞を受賞し、多彩な才能を発揮しています。芸名自体は、「薔薇と百合(ローズ&リリー)みたい」という学生時代の名付けから、ボーイ・ジョージのファンと言うことから、男性でも女性でもなく、国籍もわからないような理由も込めて、リリー・フランキーとしているそうです。

・もともとは、「劇団スーパー・エキセントリック・シアター」の戯曲となります。

・物語は、とある中年男性がカレーを作る内容です。そのカレーは妻の誕生日に作るカレーで、作ってから3日後のカレーが好きな妻のために3日前からカレーを作り始めます。そのことで、孤独な男性に小さな奇跡が起こり始めるストーリーです。

・序盤より、息子の映像から始まり、そこから雨の日に自宅に帰ってくる主人公が描かれます。

・本作はほとんどが一人芝居ともなるので、リリー・フランキーの部屋の中での行動だけが淡々と描かれます。

・突然の停電と、小さなアパートの一室での生活となりますが、突如カレーを作り始めます。

・非常に美味しそうな手作りカレーでもあり、このカレーは食べてみたい気がします。

・部屋の中とラジオ放送だけで作品が描かれた後、タイトルとなります。

・淡々とした展開でもあり、その中で流れていくラジオ放送は、本作のポイントになっています。

・全体的に夜のシーンと停電の発生もあり、画面は暗いのですが、アパートの一室で一人でなにかをしているところに意味がある作品です。

・細かい説明がないところが特長なので、説明不足と感じてしまいますが、本作の意図を考えると、この演出だからこそ伝わることがあります。

・明け方となりカレーを食べるわけですが、この虚無感と喪失感は、すでにこの夜明けで洗い流されているようでもあり、失踪してしまった妻と、幼くしてなくしてしまった息子の間で、何を思って健一が暮らしているのかがセリフや説明を使わずに伝えています。

・52分という時間で、アパートの一室で描かれる男の物語には、なんともいい表せられない感情が湧き出る感じがします。

・終盤での電話の一人芝居は秀逸です。

 

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映画「その日、カレーライスができるまで」オリジナル・サウンドトラック

映画「その日、カレーライスができるまで」オリジナル・サウンドトラック

  • 『その日、カレーライスができるまで』製作委員会
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【日本映画】「Eggs 選ばれたい私たち〔2021〕」を観ての感想・レビュー



【監督】川崎僚 
【出演】寺坂光恵/川合空/三坂知絵子/新津ちせ/湯舟すぴか/みやべほの/見里瑞穂/斉藤結女/荒木めぐみ/鈴木達也/
【個人的評価】★★★☆☆

 

【あらすじ】主人公 純子は、子供のいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)の説明会に参加する。そこで従姉妹の葵と再会する。レズビアンである葵は、純子の家に泊めてもらい、奇妙な共同生活を始める。

 

 

Eggs 選ばれたい私たち

Eggs 選ばれたい私たち

  • 川崎僚
  • ドラマ
  • ¥2037

 

 

・川崎僚監督は、映画の脚本家を目指しながらも、徐々に役者や監督といった道へと進み、2013年短編映画『夏目の女』で監督デビューをしています。その後、2018年『wasted eggs』で初の長編映画を手掛け、様々な賞を受賞。その後、2021年に改題をし、『Eggs 選ばれたい私たち』で全国で公開されています。なお、性別で作品を判断してほしくはないという考えから、川崎僚という名前で活動をしています。

・寺坂光恵は、児童劇団でミュージカルを中心に活動をし、2014年『かかし女-フェノメノン・ガール-』 で映画出演しています。その後自主映画等の出演を重ね、舞台や映画で活躍している女優です。

・物語は、エッグドナーの説明会を通じて出会ったいとこ同士が、そのことをきっかけに奇妙な共同生活を始め、女性の生き方等を見つめ直すようなストーリーです。

・序盤から、ドキュメーンタリーのような演出で、エッグドナーのことを語る女性が描かれ、そのBGMとして、卵をボウルでかき混ぜる音が被さります。

・淡々とした演出ながらも、ドキュメンタリーな演出なので、いきなりではありますが、すぐに作品の世界観には引き込まれます。

・「私は、キャリアも結婚も出産も、全部諦めたくないんです。」

・ひょんなことから純子の部屋に葵が転がり込みますが、なかなか取引条件を持ち出してきて、嫌な感じです。

・「じゃ、ここ住んでいい?」

・ここから共同生活をしていきますが、家のルールが崩れたりするので、なかなかイライラします。

・「ごめんごめん」

・これで済んでいく流れにはストレスを感じてしまうところもあり、本題のエッグドナーとはちょっと異なる展開とも思えます。

・要所要所で海岸の情景が挿入されますが、これも暗喩にあるところになります。

・従姉妹の葵の行動がなかなか引っかかって来るところがあり、細かいところのお金のやり取りにはうんざりするところはあります。

・理屈的には生涯にかかる費用を計算するクダリは面白いのですが、生涯に使う生理用品の費用352,800円を考えるとたしかにその金額ですが、こういう考え方をしてしまうと何も前に進まない気もします。

・「子供産まなきゃ生理なんて意味ないよ」

・「私は差別していませんって、そう思い込んでるだけだよ。」

・意外と鋭いことをサラッと描いているところがあります。

・葵の元カノとの別れとして、とある店で再会するのですが、忘れ物を渡した道具がちょっと気になります。

・「こういうのはね、気持ちなの、気持ち」

・シレッと描く演出がなかなかドライな感じもしますが、説明しすぎないところが、序盤のドキュメンタリー的な演出に通じているかと思います。

・終盤で、再び卵をかき混ぜる音をBGMに純子が着替えをするシーンが描かれ、このシーンのなんとも言えない感じは、女性ならずとも、なんとなく重くのしかかる悩みや苦悩に思います。

・「選ばれなくて、かわいそうって思ってる?」

・ここから純子と葵の間で揉め事がありますが、ここで割れてしまう卵にも、ストレートに言葉にならない演出が込められています。

・「理解してもらえないって思い込むの、差別されてるって思い込むの、やめな。」

・結婚や出産をどう考えるのか、そして、エッグドナーとしてハワイへ行った葵との関係は、この海岸がその意味合いとなっているように思われ、その隔たりというのは、なかなか他人には理解しづらい点を、本作なりの表現で描いていると思います。

・70分という時間でまとめ上げた作品となっていますが、厳密に答えの出しにくい社会問題を扱った作品でもあり、観る人によって賛否の別れてしまう作品かと思いますが、監督のメッセージはエッグドナーに関心のない人にも伝わるような内容かと思います。

 

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SEASONS OF WOMAN

SEASONS OF WOMAN

  • 根矢涼香
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生罪 ~名も呼ばれぬ妹へ~

生罪 ~名も呼ばれぬ妹へ~

  • 作者:川崎僚
  • ブリジットブックス
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【日本映画】「シン・ウルトラマン〔2022〕」を観ての感想・レビュー

 

【監督】樋口真嗣



【出演】斎藤工/長澤まさみ/有岡大貴/早見あかり/田中哲司/西島秀俊/山本耕史/岩松了/長塚圭史/嶋田久作/益岡徹/山崎一/和田聰宏/

【個人的評価】★★★☆☆

【あらすじ】「禍威獣(カイジュウ)」という巨大生物が現れるようになった日本が舞台。政府は「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立し、禍威獣と戦う。

 

shin-ultraman.jp

 

・樋口真嗣監督は、高校卒業後に、ゴジラの怪獣造形の携わり、映画業界に入っています。その後、1984年『王立宇宙軍 オネアミスの翼』で助監督を務め、様々な特撮に関わっています。2005年「ローレライ」で大作映画に関わり、以後、「日本沈没」「隠し砦の三悪人」など話題作を監督しています。

・齊藤工は、高校時代よりモデルとして活動をし、2001年「時の香り〜リメンバー・ミー」で俳優デビューをしています。2012年には「サクライロ」で監督デビューをしており、2017年「blank13」では、第20回上海国際映画祭でアジア新人賞部門最優秀監督賞を受賞しています。

・長澤まさみは、東宝「シンデレラ」オーディションで史上最年少の12歳でグランプリを獲得し、その後、映画『クロスファイア』で映画デビューしています。ティーン雑誌『ピチレモン』の専属モデルとしても活躍し、2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』のヒロイン役としても話題となり、多彩な演技で注目されている女優です。

・キャッチコピーは「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」と「空想と浪漫。そして、友情。」です。

・「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」(SJHU)の3作目となり、「シン・ゴジラ 」「シン・エヴァンゲリオン劇場版 」「シン・ウルトラマン 」となっています。なお、4作目は、「シン・仮面ライダー 」です。

・物語は、禍威獣と呼ばれる巨大生物と戦うため禍特対が設立され、禍威獣と戦うストーリーです。

・序盤から、禍特対の設立までの禍威獣が登場するシーンを矢継ぎ早に描いていき、禍特対の人員構成や影響力をサクッと描いていきます。

・なお、オープニングのタイトル表示も、もともとのウルトラマンのオマージュになっており、シン・ゴジラと出るは、「SJHU」の関連と、もともとこんな感じでの「ウルトラQ」からのタイトルとなります。

・シン・ウルトラマン自体は、オマージュが多数込められた作品でもあります。

・もともとのウルトラマンを知っている人はどのくらいの思い入れがあるかによって、本作の感想が変わってしまうのかもしれません。

・また、シン・ゴジラのイメージで本作を観るのもちょっと違うのかもしれません。それは、もともとのウルトラマン自体、毎回怪獣や宇宙人と対決する作品ではありますが、戦い方自体には多くの工夫があり、人間サイズの状態での怪獣等も登場することがあり、よく知られている巨大なウルトラマンが戦うだけにとどまらないところがあります。

・また、オマージュと言う点では、はじめに登場したウルトラマンの口元に注目であり、3タイプ存在していたウルトラマンの顔の初代の顔をしています。その後、顔の造形は「Cタイプ」に変わりますので、再度鑑賞する際には注意して観るとよいです。

・さらに、ウルトラマンのカラータイマーはついていない代わりに、シルバー、レッド、グリーンと、体の模様の色が変わります。

・脚本は庵野秀明が担当しており、シン・ゴジラ同様に「難しい言葉を羅列する」手法ではありますが、その一辺倒ではなく、「ヤバい」「いいんじゃないですか?」等、妙に軽くあしらうような言い回しもされています。

・これはウルトラマン自体のオマージュ色の強い作品であり、新たに再構築したというよりも、当時のウルトラマンに対する製作者の愛情が込められた作品でもあるので、その愛情表現に相容れない人にはおすすめできない作品ではあります。

・「都度、気合を入れるために長澤まさみがお尻をたたく」「妙に顔のアップが多い」「顔のメイクがかなり濃い(ほとんどの人の顔のドーランが濃い)」といろいろと言いたいところはありますが、これは制作者の趣味だと思います。趣味を取り入れながら、原作にオマージュを捧げていると解釈するのが良いです。

・撮影カットやアングルも妙なアングルが多く、違和感のある位置からの撮影が多いですが、この点については、製作者の趣味とウルトラマンの異様さのどちらも込められていると思います。

・実相寺昭雄演出のオマージュとも受け取れます。

・さまざまな事件と怪獣や外星人の襲来が描かれていますが、ほとんどはもともとのウルトラマンにある話を踏襲しているので、本作が突飛なわけではなく、もともとのウルトラマンの意外な設定と物語構成が、本作の主軸となっています。

・特にメフィラス星人は本作を象徴する印象もあり、ウルトラマンの作品自体が、「戦うだけでなく、異様な星人との対話」というところも忘れてはいけないところだと思います。

・そういう意味では、バルタン星人には登場してもらいたかったところはあります。

・終盤、ゾフィーならぬ、「ゾーフィ」が登場しますが、この点についてはマニアックすぎるオマージュとなっており、当時の書籍に誤植として「宇宙人ゾーフィ」が書かれており、ここには宇宙恐竜ゼットンを操るとなっているネタが使われています。

・もともとのウルトラマンは、人類の叡智で宿敵を倒すという描かれ方であり、本作でも、それは踏襲されています。

・中盤以降、脚本が雑な印象を持ちますが、とはいえ、たった2時間で「空想科学シリーズ ウルトラマン」とは何だったのかということもある程度描いており、初代ウルトラマンの制作意義もなぞらえているのかと思います。

・怪獣や外星人と戦うだけでなく、異なる考えを持つ外星人の存在をしっかり示している点では、きっちりとオマージュとなっています。

・賛否の分かれる作品ではありますが、初代ウルトラマンにどの程度愛着があったかということと、その愛情表現の方向性が一致しているという人には高評価かと思われ、当時のウルトラマンを知らない人には、小難しい印象を受けながらも、これはこれで楽しめるとは思います。

・リアリティをもたせながらも、特撮というところを優先する演出でもあり、物理法則を無視した感じもありますが、そもそも「ウルトラマン」は子供が楽しんでみていた円谷プロの空想特撮シリーズであり、戦うだけにとどまらないところはしっかりと意識しておくほうがよいです。

・なお、監督は樋口真嗣であり、庵野秀明ではありません。誤解なきよう鑑賞ください。

 

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【日本映画】「草の響き〔2021〕」を観ての感想・レビュー



【監督】斎藤久志 
【出演】東出昌大/奈緒/大東駿介/Kaya/林裕太/三根有葵/利重剛/クノ真季子/室井滋/
【個人的評価】★★★☆☆

【あらすじ】主人公 和雄は、心に失調をきたし治療のために妻 純子とともに函館でひっそりとリハビリをしながらも、そこで出会った人たちとの交流を始まる。

 

 

草の響き

草の響き

  • 東出昌大
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・斎藤久志監督は、1985年『うしろあたま』の自主製作映画でぴあフィルムフェスティバルに入選し、1986年「はいかぶり姫物語」で監督デビューをしています。脚本も手掛けることもあり、コンスタントに作品を作り上げている監督です。

・東出昌大は、高校時代に第19回メンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリで受賞し、芸能界に入ります。モデルとして活躍後、2012年『桐島、部活やめるってよ』で映画デビューをし、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しています。2013年NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』『ごちそうさん』に出演し、『ごちそうさん』で共演した女優の杏と結婚していますが、後に離婚をしています。2014年『クローズEXPLODE』で映画初主演をし、以降、『菊とギロチン』『寝ても覚めても』等で評価されています。不倫報道により一時期低迷していましたが、現在はフリーの俳優として再起しています。

・奈緒は、高校1年のときに地元福岡でスカウトされ、芸能活動を開始しています。2013年にテレビドラマに初出演し、2016年『雨女』で映画初出演をしています。2017年までは、本田なおで活動をしていましたが、姓名判断より本名の「奈緒」と芸名を変更して以来、仕事が増えたとのことです。2019年『のの湯』では、テレビドラマ初主演を努めています。尊敬する女優は田中裕子。

・物語は、精神的な心の病により精神失調をした主人公が、妻とともに函館の田舎で生活しながらも、そこで出会った人たちとの交流を描いたストーリーです。

・序盤から、日々ジョギングをして心の平静を取り戻そうとする主人公が描かれます。

・なんとなく、東出昌大の実生活とシンクロするような印象を受けますが、その点も含めて、妙にリアリティを感じてしまいます。

・ですが、私生活と本作との関連はないとは思います。

・洗濯物を取り込みかどうかのところでも、言いたいことはよくわかります。

・妻 純子役の奈緒は、夫を支えている生活をしていますが、この感情の拠り所はちょっとわかりにくいところもあり、純子の精神的な意識がどうなるのかも気になところではあります。

・スケボーをしている少年たちと、和雄の関係性は、いまいちわかりにくいです。

・「おい、お前、女出来たからって、調子乗ってんじゃねえぞ」

・学生たちの物語と和雄の物語は、微妙に関わり合いながらも、和雄自身の昔の話とも思え、妙な暗喩が込められている気もします。

・「言ってもどうにもならないことだから、怒ってるのはそっちでしょ」

・「カズくんは幸せじゃないの?」

・主人公はあくまで和雄なんですが、カズオに感情移入することがちょっとむずかしいところがあり、むしろ、純子から見た和雄の行動を考えると、純子に感情移入する物語なのかもしれません。

・でもそれもまた読み取りにくいところではあり、どのキャラクターも皆、壁があるように感じます。

・終盤ちょっと演出上わからないシーンがありますが、後々何をしているのかがわかります。

・「本当は、結婚なんてしたくなかった?子供なんていらなかった?」

・ 和雄と純子の談話室での会話にどういうところに感情をおいていいのかわからなくなります。

・このシーンは対話をしていながらも、途中から2人が同じフレームには入らず、各々のカメラ目線で対話がされ、和雄に関しては、カメラ目線すらできないところがあります。

・病院を出ていくシーンでも、その意図がどういうことなのかも、振る舞いだけで示しているところがあります。

・「東京にフェリーで帰る」というのをさらっと描いていますが、これにはこれでやはりしっかりと描いていないながらも、意味があります。

・この終わり方を肯定していいのかどうかがちょっと判断つきません。

・観た人によって感じ方の変わる作品ではありますが、自分自身にもこういう心の病に侵される可能性もあり、そのときにはまた違った感じ方をする作品なのかもしれません。

 

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草の響き

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  • 東出昌大
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