【監督】白石和彌
【出演】門脇麦/井浦新/毎熊克哉
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】1969年を舞台に若松プロダクションの助監督として活躍した吉積めぐみが主人公。若松孝二監督の元、映画製作を通じて描く若松孝二監督の第三者目線から描いた自伝。
・2012年に逝去した若松孝二監督を中心に描かれる映画製作とその助監督の吉積めぐみの物語。
・白石和彌監督は、近年ノリにノッていて、野心的な作品を数多く生み出しています。
・1969年を舞台としており、当時より世間にメッセージ性のある作品を制作していましたが、プロダクションの運営も考えて、作家性のない作品も手がけることになります。
・そうした中で、「映画とは」「作品とは」という制作に対する考え方が見え隠れします。
・中心となった若松孝二監督を演じるのは、意外にも井浦新。
・繊細なイメージの人ではあったのですが、若松孝二監督を演じるにあたって、もともと若松映画にも出演していたこともあり、よく特長を捉えているのだと思います。実際、当時の若松監督を見たことはありませんが、このミスマッチのように見える配役が実は最も素晴らしく思います。
・1969年当時の若者がどのようなことを考えていたのか。それが込められた作品であり、「目的や生きる意味」という普遍的な考えと苦悩が描かれています。
・くどくど説明するような映画ではなく、若松孝二監督の生き様を描いた作品でもないほかの主題が隠された映画であると思われます。
・それは、主人公目線が助監督の吉積めぐみに置かれているところでもあり、時代の中心になろうとした人物の近くで、時に客観的に時代の断片を見せつけるところにあるような気がします。
・当然、吉積めぐみを演じた門脇麦が素晴らしく、前に進み続けるということは何なのか、それをうまく表現できているのかと思います。
・1970年台の雰囲気と当時の熱気を描きつつも、根底には普遍的な「何をすべきか?」という命題を突きつける良い映画であると思えます。