【監督】岨手由貴子
【原作】山内マリコ
【出演】門脇麦/水原希子/高良健吾/石橋静河/山下リオ/佐戸井けん太/篠原ゆき子/石橋けい/山中崇/高橋ひとみ/津嘉山正種/銀粉蝶/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公は20代後半の箱入り娘 華子。結婚相手に振られ相手探しに焦る中、弁護士との結婚が決まる。富山から上京した美紀は、仕事も恋人も特に執着がなく、東京にいる意味を見いだせずにいた。そんな中、2人が出会う。
・岨手由貴子監督は、、ENBUゼミナールの映画監督コースに通い、2004年『コスプレイヤー』で、ぴあフィルムフェスティバル2005に入選しています。2015年『グッド・ストライプス』で長編映画監督デビューをしています。
・門脇麦は、ニューヨーク生まれの東京育ちで、宮崎あおいや蒼井優の作品を観て、役者を志しています。一癖ある映画に数多く出演しており、個性的な若手女優としては、個人的に非常にツボな役者です。
・水原希子は、アメリカ人と日本生まれの韓国人のハーフで、2003年に『Seventeen』の専属モデルとして活躍後、『ViVi』に専属モデル、『MAQUIA』の専属モデルで活躍し、2009年『ノルウェイの森』で映画デビューをしています。映画やテレと幅広い活躍をしている女優です。
・原作の山内マリコは、2008年短編「十六歳はセックスの齢」で第7回R-18文学賞・読者賞し、以降、短編集『ここは退屈迎えに来て』『アズミ・ハルコは行方不明』などの作品を発表しており、映画化されている作品も多くあります。
・物語は、都会生まれの箱入り娘と地方出身の2人を主軸とし、20代後半から30代にかけて息苦しさを抱える女性たちが、軽やかに変化していく姿を描いたストーリーです。
・物語は、いくつかの章があり、一章「東京」二章「外部」三章「邂逅」四章「結婚」五章「彷徨」となっています。
・まずは、華子の話が描かれ、良家の娘ということで、多少一般的な家庭よりも裕福な家柄で描かれます。
・男性を紹介してくれるということで訪ねたお店で、おしゃれなレストランと、居酒屋とでの違いで、思い込みではありますが、華子とその友達の里英の違いがよくわかります。
・大学での友達同士での会話も噛み合う部分とそうでない部分が見え隠れすることで、階級の違いにより、住む世界が違うことがわかります。
・本作は、その階級を描きながらも、それぞれの個人として他の世界が魅力的に見えるという点と、自己主張という点が見え隠れしているように思われます。
・豆知識として、政治家の息子の場合は、あまり難しい名前を名づけないところがあるのがわかります。
・水原希子は、顔立ちが派手なので、大学入学の頃と、現在とでは随分とイメージが異なる感じがします。まあ、化粧でかなり変わるのはわかりますけど。
・「この子たち、貴族」
・「もう、婚期逃しまくりだよ。」
・女性側からみた社会階級の構成でもあり、意外とこういうヒエラルキーを感じるのは、学生時代から新社会人に多いのかもしれません。
・中盤で、バイオリンの演奏が描かれますが、ここで、徐々にバラバラだった人物関係が急速に繋がりはじめます。
・多少、物語の時間軸が前後しますが、各キャラクターの相関図が結びつくところに気持ちよさがあります。
・それぞれのキャラクターの視点から物語が描かれたあとの相関の結びつきなので、その結びつき方のそれぞれの視点と感じ方がスッと入ってくるような演出力があると思います。
・「女はサーキュレーターだと思っているのかなぁ」
・華子と美紀と逸子の3人が会って話をするシーンがありますが、育ちの違いが如実に出てきます。
・やはり、同じ場所や空間にいながらも、それは階級の違いがあれど、たまたま同じ環境に居合わせる範疇での出来事であり、実際にはお互いの許容範囲ギリギリの場所であるということをなんとなく感じさせるところです。
・亮子と幸一郎の別れ話のシーンでも、居酒屋だからこそ成立するようなところでもあり、その言葉遣いや振る舞いにも違いが出てくるような気がします。
・「全部、美紀さんのものだから」
・「うちの地元だって、町から出ないと親の人生トレースしている人ばっかりだよ」
・華子と美紀の会話で、隣の芝生が青いような印象を受ける表現がありますが、この格差から生まれる価値観の違いから、どのような環境にあっても、人それぞれに大切ななにかがあるようなきがします。
・「みんなの幻でつくられていく、憧れの東京」
・そんなセリフもありますが、本作で描かれる要素は、その格差を描いているというよりも、大切ななにかの違いを描いているようなそんな気もします。
・女性視点からの女性の物語では有りますが、そんなことよりも、環境の違いとその違いでも、大切なものがなにかということを問いかけてくるような、そんな作品かもしれません。