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【日本映画】「しとやかな獣〔1962〕」を観ての感想・レビュー

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【監督】川島雄三
【出演】若尾文子伊藤雄之助山岡久乃/川畑愛光/浜田ゆう子/高松英郎小沢昭一船越英二
【個人的評価】★★★★☆

 

【あらすじ】元海軍中佐の前田時造の一家は、狭い団地暮らしをしているが、妻と2人の子供とともに他人の金を巻き上げて生活をしていた。

 

 

 

 

川島雄三監督は、松竹大船撮影所監督部に入社し、初の助監督公募に選ばれ、多くの監督の助監督を務めています。1944年『還って来た男』で監督デビューをし、1946年『追ひつ追はれつ』では日本初のキスシーンを撮影しています。松竹、日活、東京映画、大映と様々な映画会社で作品を作り、喜劇や風俗を描いた作品を残しています。

若尾文子は、1951年、大映の第5期ニューフェイスとして映画界入りをし、1952年『死の街を脱れて』で映画デビューをしています。その後、京マチ子山本富士子らともに正統派美人女優として人気となり、多くの作品で活躍しています。建築家の故黒川紀章と結婚をしています。

・物語は、団地に住む一家の生活を描いたブラック・コメディ作品となっています。

・オープニングからとある団地のベランダから室内を映した映像で、そこに和楽器で演奏されたシーンが描かれます。

・このオープニングだけで、本作のこだわりがあるような独特の雰囲気を感じ、傑作なんじゃないか?という予感がします。

団地の室内で、船の汽笛の音や、中盤では機関車の音も聞こえます。たったこれだけのことでこの団地の立地がわかるのも巧みです。

・トイレからアルミの灰皿を取りに行くシーンがありますが、これも独特な画角でトイレの中を見せ、狭さを印象強く見せます。

・トイレを出る前に手を洗う方法も蛇口の水滴で洗うというところも細かいのですが、ケチくさいということを体現しています。

・「貧乏は骨の髄まで染み込む」

・1962年の作品だというのに、2021年の今でもそのセリフの本質はしっかりと生きています。コレがまたスゴイです。

・全編がほぼ団地の一室で物語が進行し、そのためワンカットで撮影されたシーンも多く、さらに複雑な構図でこの団地の一室を撮影しています。

・絵コンテの時点でここまで設計されているとは思いますが、CGを使わずに綿密な動線が引かれているように思います。

・俯瞰や煽りを惜しげなく使っているので、団地の一室でだけでここまで雰囲気を変えてくるのもスゴイです。

・何度か、階段を登り降りするシーンが出てきますが、この階段の演出は、独特なところがあり、「上り詰める人と降りていく人」の暗喩を見事に描いていると思います。

・序盤から順にキャラクターが増え、物語の複雑さを丁寧に順序立てて紹介しているので、見失うことはないと思いますが、本作の主軸は、一人の人物ではなく、前田家のこの団地の一室であるかのように思います。

・96分という時間の中に、当時の時代性と、対する普遍的な人の考え方が介在し、シンプルな構成にみえながらも、奥の深いテーマを持ったブラックコメディ作品かと思います。